【完】キミと生きた証
時を重ねて
Side 霧沢ちとせ
***
数年ぶりに、この地元の田舎町に戻ってきた。
あたしを駅で迎えてくれたのは、大好きな親友。
「仁奈ちゃん・・・!」
「ちーちゃん・・・っ!!」
思わず仁奈ちゃんの両手に飛び込むと、仁奈ちゃんはあたしの頭をポンポンとなでた。
「おかえり…ちーちゃん!会いたかったぁー!!」
大人が駅でわんわん泣いて、抱き合ってるんだもん。
人は少ないにしても、注目の的だよ・・・。
でもあたしも大泣きして、仁奈ちゃんにしがみついてた。
・・・東京の病院で瞬に再会したあの日、仁奈ちゃんも遅れてあたしのところに駆けつけてくれた。
すーっごく、怒られたっけ。
すっごくすっごく、謝ったっけ。
あれから、1年がたった今日。
あたしは退院して、今、この町に戻った。
「仁奈子ちゃん、ありがとうね。」
お母さんが仁奈ちゃんに差し出すのは、やっぱり・・・感謝のみかんなんだ。
あたしは苦笑いするけど、仁奈ちゃんは嬉しそうにそれを受け取った。
「じゃあ、行こっか!」
あたしたちはタクシーに乗り込んで、昔住んでた実家へと向かった。
「で、いつ瞬くんは来るの?」
「引っ越しの搬入が終わってから新幹線だから・・明日かな?」
「そっか。じゃあ今日はちーちゃん独り占めだ!」
懐かしい仁奈ちゃんのえくぼ。
あどけない表情は全然変わらないけど。
今は・・・立派な看護師さん。