【完】キミと生きた証
駅員さんが電話してくれていたから、お母さんが迎えに来た。
冬と言えばみかんでしょ、っていう考えのお母さんは、駅員さんと瞬にみかんを一袋ずつ渡してる。
だから、瞬は、みかんなんか・・。
止める体力も残ってなくて、あたしは車の中でぐったりとそれを見つめてた。
瞬がお母さんにお辞儀してる。
後部座席に置かれた携帯酸素を吸おうと準備してたら、お母さんが戻ってきた。
「おまたせ。一応酸素もってきたけど、苦しかったら吸うのよ。」
「ありがと。助かる。」
「あの子・・・瞬君って言ったっけ。あんなに派手な見た目なのに優しくて礼儀正しくていい子よね。」
「うん・・・。」
優しい手のひらが、
「大丈夫、大丈夫」って優しく繰り返す低い声が、
涙がでるほど愛しかった。