私の王子様を見つけました

私の立場とは

拓斗が帰ってきたのは明け方だった。


一度私の部屋に入って来て枕元に何かを置くと、そのまま無言で出て行く。


何だろうと思い、電気をつけた。


そこにあったのはパンダのねいぐるみ。



5才の誕生日に拓斗がくれた物で、もうボロボロだ。


アパートから持ってこれなくて、これだけは捨てたくなかったんだよね。


拓斗ありがとう。


拓斗は誕生日に必ずプレゼントをくれた。


拓斗の誕生日プレゼントは、キーホルダーとか、UFOキャッチャーで取ったぬいぐるみとか。


実家の自分部屋にある宝箱に、全てしまってある。


アパートに引っ越した時、パンダだけ持って来たのだ。


アパートの荷物は全て捨てたと聞いていたのに。


嬉しくてパンダをぎゅっと抱きしめた。


拓斗は彼女と一緒ではなかったのかな。


聞きたくても聞ける立場でないけど。


拓斗は本当に優しい人だったのに、両親の離婚で変わってしまった。


拓斗の心の闇を取り除いてあげる事が出来たらいいのに。


駄目だ。


そんな事考えたら駄目。


私は拓斗の会社に雇われてる、ただのモデル。


それ以上を望んではいけない。













< 31 / 61 >

この作品をシェア

pagetop