宮川修内太の異常な日常~魔女の瞳番外編~
淀みない仕草で紅茶の入ったティーカップを運んできたメグは、カチャリとも音を立てずに俺の目の前にそれを置く。

…ティーバッグとは違う上質な茶葉の香り。

素人の俺でも、上物の紅茶である事は理解できた。

「さてと」

メグは俺と対面のソファに座る。

「それじゃあ早速始めましょうか。今日は初日だし、とりあえず紅茶飲みながらでいいから私の話を聞いてて」

そう言ってメグ先生の授業は始まった。

「まず、貴方の左目の呪眼だけど…どういうものか理解してる?」

「ああ」

俺は紅茶に口をつけながら頷いた。

メグの家系に伝わる、膨大な量の魔術を蓄積した眼球。

目玉の形をした魔術辞典とでも言ったところか。

「いい認識ね」

メグは微笑んだ。

「ちなみに呪眼は私の右目と貴方の左目の二つがあるけど、片方がなくなったからって威力が下がる訳じゃないわ。蓄積されている魔術が半分ずつになる訳でもない。呪眼というのは二つでセット、という訳ではないから」

つまり片目だけでも、俺の持つ呪眼はメグと同等の力を持つという訳か?

そう言うと。

「同等っていうのは少し違うかもね」

メグは顎に人差し指を当てた。

「どんなに性能のいい車でも、ガソリンタンクの容量が違えば走行距離が違うでしょ?」

呪眼の性能を引き出す『燃料』の量が、俺とメグでは違うって事か。

「そう、ここで言う『燃料』っていうのは『魔力』の事ね」

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