ひとりじめしたい。~イジワルで甘いお隣さん~


「そんなあたしに気づいたのか、加央里はあたしにただ一言こういったの」


「……」


「美乃里の大切なもの全部もらうね……って」


「っ……」


今でも思い出したら吐き気と、めまいがする。


「そこから加央里は言った通りにあたしの大事なものを全部奪っていった」


「……美乃里」


ギュッと握られる手。


「友人に親の期待に、全部が全部」


頑張らないあたしが悪い。


そう思って勉強もスポーツも頑張ったけど、加央里にはかなわなかった。


どうしてもあの人を超えることはできなかった。



「だ、だからあたしは逃げてきたの。加央里からも、自分からも……」


結局自分が嫌いで、逃げてきたんだ……


「加央里が悪いんじゃない。役立たずな自分が悪いんだって……」


毎朝作った加央里の分のお弁当。


それが食べられて戻ってくることはなかったし、貸したものだって返ってくることはなかった。


「でも嫌いになれなかった……」


あんな姉だけど、あたしのたった一人の姉だから……


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