ひとりじめしたい。~イジワルで甘いお隣さん~


「そんなあたしに気づいたのか、加央里はあたしにただ一言こういったの」


「……」


「美乃里の大切なもの全部もらうね……って」


「っ……」


そこまでだったなんて思いもしなかった。


美乃里の姉だってわかってるけど……


初めて女にこんな怒りを感じた。


「そこから加央里は言った通りにあたしの大事なものを全部奪っていった」


「……美乃里」


「友人に親の期待に、全部が全部」


今にも壊れそうな美乃里の心。


それが怖くて、俺はそっと美乃里の手を握る。


『大丈夫』だって。


『美乃里には俺がいる』ってわかってほしくて。



「だ、だからあたしは逃げてきたの。加央里からも、自分からも……」


美乃里にとってここは救いの場所だったのかもしれない。


美乃里の心が逃げるための場所。


「加央里が悪いんじゃない。役立たずな自分が悪いんだって……」


なのにそれでもなお、美乃里はあいつをかばおうとする。


「でも嫌いになれなかった……」


それは美乃里が人一倍愛情に深い子だから―……


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