黒愛−2nd love−
彼の態度を私は不快に思わないが、眼鏡美人は怒りだした。
「そんな言い方ないでしょう?
前を見ずに飛び出して、ぶつかったのはあなたです。
彼女に謝りなさい!」
彼が深い溜息をつく。
「悪かった。じゃあな」
不機嫌そうな顔して心のこもらない謝罪を残し、足早に去ってしまった。
「カナタには困ったものだわ……」
彼女はそう呟いてから、彼の代わりに頭を下げた。
「本当にごめんなさいね。
あなたが本日編入された黒田愛美さんね?」
私のことを知っている口ぶりで、彼女は“三ノ宮沙也子”と名乗った。
学年は3年で、生徒会の副会長をしているそうだ。
三ノ宮という苗字が引っかかった。
三ノ宮学園、この高校と同じ名前だ。
聞きたそうな顔していたのか、彼女は自分から“理事長の孫娘”だと教えてくれた。