黒愛−2nd love−
◇◇
その日の夜――
この学園は全寮制で、私も女子寮に入寮した。
10畳の二人部屋で、同室の子はクラスも同じだという。
久美と名乗るその子は、お嬢様っぽくない普通の女の子。
荷物を整理している私に、久美は嬉しそうに話し掛けてきた。
「良かったー!愛美さんも私と同じ、庶民なんだね!」
「愛美でいいよ。“さん”はいらない。
私も久美って呼ぶから」
「それがね…… 呼び捨てダメなんだよ」
久美の説明によると、女子は“さん”付け、
男子は“くん”か“さん”付けで呼ばないと怒られるというのだ。
面倒臭い学園だと、呆れてしまう。
「仲のいい友達を呼び捨てして、何が悪いの?
そんなおかしな規則、守る必要ない。
誰が何と言おうと、私は久美って呼ぶから」
荷物整理の手を止めて、久美に向けキッパリと言った。
彼女は初めポカンとして、
それから目を輝かせて私の手を握ってきた。
「愛美さん……ううん、愛美って何だかカッコイイ!
そうだよね、うちら庶民だし、お嬢様ぽくする必要ないよね!」