黒愛−2nd love−
◇◇◇
5月。新緑の森の中を、黒塗りのベンツが走っていた。
「あとどれくらいで着きますか?」
後部席から、運転席に向け聞いてみる。
座り心地のよい高級皮張りシートといえ、自宅を出発してから三時間。
そろそろ座り疲れてきた。
運転手のおじさんが、
「あと30分ほどでございます」
と丁寧な返事をしてくれる。
その言葉通り、ジャスト30分で立派な門の内側に入った。
敷地内は別世界。
完璧に整備された前庭に、春の花が整然と植えられていた。
西洋風の噴水に洒落た外灯、石畳のアプローチ。
ヨーロッパのどこかの国に迷い込んだ気がした。
極めつけはコレ。
「お城か!」とツッコミ入れたくなるような建物は、高校の校舎。
レンガと白塗りの外壁が美しい、5階建ての建物だった。