黒愛−2nd love−
綺麗に片付けられ空っぽの教会に、
忘れ物のようにぶら下がる
十字架。
「何で、置いて行ったん
だろう……」
独り言のように、私が呟いた。
キリスト像と同じく、信仰の対象であるはずの十字架を、
置いて行った理由が、何となく気になった。
叶多くんは、あまり興味がなさそう。
あくびをして、ライトを私に返して言った。
「単純に、取れなかったからじゃねぇの?
あの十字架、鉄製だ。
スゲェ重いぞ。
それを鎖でぶら下げてあるから、
アレを外して運ぶとなると、
普通の引っ越し業者じゃ、無理だな」
鉄の十字架は、白い塗装がところどころ剥げていた。
ぶら下がる鎖の部分も錆びて、
茶色に変色していた。
「愛美」
と呼ばれた。
叶多くんはベンチに座り、
鞄の中から、水や軽食を出していた。
何となく気になる十字架から目を離し、彼の側に寄った。