黒愛−2nd love−
本当に自殺する気はないが、
“死んだ”という事実が欲しかった。
そうしないと、春成も三ノ宮も、
いつまでも私達を追ってくるから。
「書いたぞ。
これ、どうすんだ?」
「明日、海の方へ行こうか?
断崖絶壁の上に、脱いだ靴と一緒に手紙を置いておけば、
飛び下りて、心中したと思うんじゃない?
海なら死体が上がらなくても、
不自然じゃないでしょ?」
この計画を完璧だと思い、
彼の遺書をポケットにしまった私だけど、
叶多くんは、
「そんなに、上手くいく気がしねぇ……」
そんなことをポツリ呟いていた。
身を起こして、彼の顔を覗き込む。
「何だよ?」
「叶多くんは、不安なの?」
「いや、そんなんじゃねぇ。
俺は一度でいいから、自由を手にしてみたかった。
それが叶ったから、ここから先はどうでもいい。
逃げ切れず、いずれ見つかってもいいと思ってる。
見つかれば……そこで終わり。
死んで終わりだ」