黒愛−2nd love−
 


叶多くんの逃亡を、周りにごまかしておいたと、

沙也子は言った。



どうやら誰にも知らせずに、一人で迎えに来たみたい。



さっきの車は、きっとタクシー。


家のベンツを、待たせているわけじゃなさそうだ。




私達の居場所を掴んでいるのは、
沙也子だけ。



三ノ宮も春成も、まだ気づいていない。



それなら、沙也子を始末してしまえば……

私達はこれからも、逃げられる。




そう考えたのは、叶多くんも同じだった。



彼は沙也子を睨みつけたまま、

背中に隠した私に囁く。




「カウントダウンするから、愛美はあそこの説教台に走り込め。


俺はあいつのピストルを、力づくで奪い取る。


沙也は……愛美を殺せても、俺は撃てないはずだ」




私もそう思ったから、彼の作戦に頷いた。



沙也子の愛は歪んでいるけど、

それでも叶多くんを愛していることに、違いはない。



愛しているから諦め切れずに、

一人で取り戻しにやってきた。




沙也子は、叶多くんを撃てない。

そう思ったのに――




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