黒愛−2nd love−
叶多くんが、カウントダウンを始めた。
「3、2、1……」
ゼロカウントで私は、3メートル前にある説教台に向けて走った。
同時に叶多くんも走り出し、
沙也子に向かって行く。
沙也子は絶対に、叶多くんを撃てない、
そう思ったのは、間違いだった。
拳銃がパンッと、乾いた音を立てた。
私の少し前、沙也子にはまだ届かない位置で、
彼が太ももを、撃ち抜かれていた。
「グゥッ……」
低く呻いて、彼は膝をついた。
暗赤色の水溜まりが、木の床に広がっていく。
私は……
信じられない光景を前に、
説教台に隠れることも忘れて、
呆然と立ち尽くしていた。
まさか沙也子が、叶多くんを撃てるなんて……