黒愛−2nd love−
 


沙也子のピストルが、火を吹いた。



私を力一杯突き飛ばす、彼の髪の毛をかすって、


弾丸が、奥のステンドグラスを撃ち抜いた。




床に尻餅をついた姿勢で、

ステンドグラスが砕ける散る様を見ていた。



色とりどりのガラスの破片が、

キラキラと輝きながら降っていた。




2発目の弾丸は、私達に当たらなかった。



助かった……

ひとまずの危機回避にホッとした時、



色ガラスの割れた窓から、

強く冷たい突風が吹き込んだ。



その風が、

天井から吊されていた鉄の十字架を、

ギギギと揺らした。




置いてきぼりにされた、十字架。


祈る者がいなくなった、十字架。


忘れられた、悲しい十字架。




その十字架をぶら下げている錆びた鎖が、

嫌な音を立てて……切れた。




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