黒愛−2nd love−
 


「叶多くんっ!危な……」




十字架の真下にいたのは、

彼だった。




間に合わなかった。




危険を伝える、私の叫びが届く前に、


彼は体を、つらぬかれていた。




背中から入り、

下腹部に抜けた鉄の切っ先が、


木の床に、突き刺さっている。




串刺しになった、彼……。



頭と両腕が、力なく垂れ下がっていた。




「い…いやあああっ!!」




私の叫びが、教会の高い天井にこだました。



震える体を引きずり、

這うようにして、彼に近づき、


血を流す、その体にすがりついた。




「叶多くん……叶多くんっ!!

嫌だよ、死なないでよ、お願い!!」




いくら呼び掛けても、

彼は何も、言ってくれなかった。




強い光を宿していた、私の大好きな双眼も、


今は光が消えて、

作り物のガラス玉みたいになってしまった。




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