黒愛−2nd love−
準備を終えて部屋を出た。
今日は土曜日。
週末は帰省する生徒もいるから、寮内はいつもより静かだ。
長い廊下を抜けて外に出る。
向かう先は、校舎から少し離れた場所にある別棟。
レンガ造りの建物全体が、学園のパーティールームになっている。
そこに向けて歩いていると、私を見る久美の視線が熱っぽいことに気づく。
「久美、どうした?」
「愛美って……綺麗」
「私、レズけないよ。悪いけど」
「あ、ゴメン、そうじゃなくて。
私なんか、あがっちゃってオドオドしてるのに、愛美は堂々として、本物のお嬢様みたい。
長い黒髪もドレスに映えて、とっても綺麗……」
「フフッ ありがと」
艶々した長い黒髪は、私の自慢。
それを手の甲で払い、背筋を伸ばして入口ステップを上がった。
会場内は既に賑やかだった。
私達は後の方に来たみたい。
50人ほどの招待客が、あちこちで小グループを作り立ち話している。
高校生の分際で名刺交換しているお坊ちゃん達に、
名のある会社の令嬢なのか、デブでブサイクなくせに、チヤホヤされている女子もいる。