黒愛−2nd love−
「では、ごゆっくりご歓談を」
そう言って沙也子が挨拶を終えると、黒服のウェイター達が動き出す。
ワゴンに乗せられ、高級な洋菓子やティーセットが運ばれてきた。
「わぁ 綺麗!」
久美はミニケーキがズラリ並んだ銀のトレーに釘付けで、
ルリコは私と逆側隣のお嬢様と、話しはじめた。
私はスッと席を立つ。
真っすぐ叶多くんを見て、歩き出した。
彼は理事長のジジイトークに適当な相槌を打ちながら、
けだるそうに珈琲カップに口を付けている。
彼に挨拶しに、入れ替わり立ち替わり招待客も寄ってきていた。
ゆっくり近づく私。
彼まであと少しというところで、邪魔が入る。
「愛美さん、ちょっとお話いいかしら?」
呼び止めたのは、沙也子だった。
編み込み眼鏡の真面目スタイルから一変し、今日の彼女は華やかだ。
コンタクトレンズを入れ、ゆったり波打つ髪を下ろし、
衿元には大粒ダイヤのネックレスを下げている。