黒愛−2nd love−
私と彼への直線距離の間に立ちはだかり、
彼女は微笑みながらグッサリ釘を刺してくる。
「どちらに向かおうとなさっているのかしら?
こちら側に、あなたが話し掛けるべき相手はいなくてよ?
本来なら、あなたはこの空間にいるはずのないお客様。
目立つ行動は控えて頂きたいの。お分かり?」
私は無言になる。
この女はやはり、敵かも知れない。
利用できるコマなのか、それとも敵なのか。
まだハッキリ分類できずにいた彼女のメモリが、少しだけ敵側に傾いた。
無言で視線をぶつけ合い、先に逸らしたのは私だった。
「分かりました。席に戻ります」
そう言って、頭を下げる。
下を向いているので見えないが、
きっと頭上では、沙也子が勝ち誇った笑みを浮かべていることだろう。