黒愛−2nd love−
頭を下げながら、私もニヤリと笑った。
顔を上げた時には瞬時に、反省しているようなしおらしい表情に戻す。
「自分の席にお戻りになって」
再度言われて、一歩足を前に出した。
そして……
「あっ」と驚きの声を上げた。
よろけた振りして、急に沙也子に抱き着いた。
彼女のドレスをひと撫でして、すぐに体を離し、慌てている振りをする。
「ごめんなさい!
パンプスに慣れていなくて、歩くのが大変で……」
「よろしいのよ。
これからは、足元にもお気を付けてね」
沙也子は笑って許してくれた。
上品なお嬢様スマイルに背を向けて、心で呟く。
笑っていられるのは今の内。
気をつけるべきは、あなたの方なのにネ……