黒愛−2nd love−
 


頭を下げながら、私もニヤリと笑った。

顔を上げた時には瞬時に、反省しているようなしおらしい表情に戻す。



「自分の席にお戻りになって」


再度言われて、一歩足を前に出した。


そして……

「あっ」と驚きの声を上げた。


よろけた振りして、急に沙也子に抱き着いた。


彼女のドレスをひと撫でして、すぐに体を離し、慌てている振りをする。



「ごめんなさい!
パンプスに慣れていなくて、歩くのが大変で……」



「よろしいのよ。
これからは、足元にもお気を付けてね」




沙也子は笑って許してくれた。


上品なお嬢様スマイルに背を向けて、心で呟く。



笑っていられるのは今の内。

気をつけるべきは、あなたの方なのにネ……





< 42 / 311 >

この作品をシェア

pagetop