黒愛−2nd love−
彼は怪しむように私を見て、低い声で聞いた。
「お前は…… 前に俺の進路を邪魔して転んだ奴か。
まさかこの状況、お前のしわざか?」
「さあ、どうでしょう?
叶多くんを逃がしてあげたいと思ったのは確かだけど」
微笑みながらそう言うと、彼がクククと喉の奥で笑った。
ああ…… 笑顔も素敵。
彼の全てが私好みで、うっとり見惚れてしまう。
「おもしれぇ。気に入った」
彼はそう言って立ち上がる。
「こっち来い」と私の肩を抱き寄せ、会場の奥へ素早く移動する。
会場内のパニックはまだ持続中。
抜け出す私達に誰も気づかなかった。
スタッフオンリーと書かれたドアを開け、細い廊下を通り、裏口から外へ脱出した。