黒愛−2nd love−
目線を彼の顔に戻すと、形の良い唇に目が止まった。
コクリと唾を飲む。
唇に触れてみたい衝動にかられた。
右手を持ち上げ、ゆっくりと彼の唇に手を伸ばす。
その手は、宙で捕らえられてしまう。
寝ていると思った彼が私の手首を掴み、目を開けていた。
鋭い視線が向けられる。
冷たい声で問い詰められた。
「お前の目的は?
俺に近付いて、何がしたいんだ?」
「“お前”はイヤ。
私は愛美。名前で呼んで?」
「はぐらかすな。
質問に答えろ」
警戒されているというより、敵か味方か嗅ぎ分けている雰囲気だった。
私も初対面の人にはそうする。
敵か味方か、利用できるコマなのかと、頭の中で仕分けする。
私達は似た者同士なのかも知れない。