黒愛−2nd love−
指に挟んで顔の前で見せられたのは、カードキー。
理事長室や生徒会室がある5階フロアへ行くための、エレベーターの鍵だ。
「これ、欲しくないか?」
真顔の彼が聞く。
特権階級を示すようなカードキー。
初めは全く欲しいと思わなかったが、今は欲しいと思う。
理由は、叶多くんが生徒会室に出入りしているから。
ただそれだけ。
カードキーに手を伸ばすと、スッと遠ざけられた。
「やらねぇよ」
そんな意地悪なことを言われてしまう。
頬を膨らませる私に、彼が言葉を続ける。
「5階は学園の中枢機関が入っているから、このキーは誰にでも渡せるもんじゃねぇ。
生徒の中で持っていていいのは、生徒会役員だけだ」
「じゃあ、私を生徒会に入れてよ」
「残念。メンバーは10人と決まってる。今はジャスト10人で増やせない。
もし欠員が出たなら……
愛美を指名してやってもいいけどな」