黒愛−2nd love−
 


指に挟んで顔の前で見せられたのは、カードキー。


理事長室や生徒会室がある5階フロアへ行くための、エレベーターの鍵だ。



「これ、欲しくないか?」


真顔の彼が聞く。



特権階級を示すようなカードキー。

初めは全く欲しいと思わなかったが、今は欲しいと思う。


理由は、叶多くんが生徒会室に出入りしているから。

ただそれだけ。



カードキーに手を伸ばすと、スッと遠ざけられた。


「やらねぇよ」

そんな意地悪なことを言われてしまう。


頬を膨らませる私に、彼が言葉を続ける。



「5階は学園の中枢機関が入っているから、このキーは誰にでも渡せるもんじゃねぇ。

生徒の中で持っていていいのは、生徒会役員だけだ」



「じゃあ、私を生徒会に入れてよ」



「残念。メンバーは10人と決まってる。今はジャスト10人で増やせない。

もし欠員が出たなら……
愛美を指名してやってもいいけどな」



< 52 / 311 >

この作品をシェア

pagetop