黒愛−2nd love−
頼りなさそうな背中が、ビクッと大きく震えた。
くるり振り向いた彼は、
久美に対して防御の姿勢をとる。
その大袈裟な反応に驚きつつ、
久美は「ごめんなさい」と謝った。
謝罪の言葉が耳に入らないのか、
それとも聞く気がないのか、
彼はじりじりと距離を開けて、
叫ぶように言った。
「やめてくれっ!そんな風に思うのはやめてくれっ!
僕のせいじゃないのに……
くそっ……」
水道の水を出しっぱなしにしたまま、彼は走って逃げてしまった。
久美はポカンと口を開けて、
突っ立っている。
流れ続ける水を止めたのは、私。
「変な人……」
そう呟いた久美に
「違うよ」と教えてあげた。
「変な人じゃなくて“面白い人”だよ」
度が過ぎる潔癖症に加えて、
被害妄想もあるのかも。
面白い人。
何かをしでかしてくれそうな人。
叶多くんを楽しませてくれそうな人。
「フフフ……ミーツケタ」