運命の人
掃除の時間、綾野は一人でぶつぶつ言っている。
わたしたちの班は階段。
手分けをして掃除をしている。
上が加宮さんと宮沢で下が綾野とわたし。
「俺はうさぎが壊れたとき、なにしてた?あ、ケーキ食べてた」
「綾野…元気だしてよ」
二人の喧嘩の理由を知ったのが今日。
ショックなのかな?
ふとポケットを触るとなにかが入っていることの気づいた。
あの、キーホルダーだった。
まるで今渡せと言ってるみたい。
「あ、綾野…」
「わー!ゴキブリ!」
声をかけた瞬間ゴキブリがでた。
ゴキブリに邪魔された。

綾野がゴキブリを逃したあと、さっきはどうした?と聞いてきた。
「えっと、いらないならいいんだけど…」
わたしは綾野にキーホルダーを渡す。
「いつもの、お礼。あとこれからもサッカー頑張ってって気持ち」
綾野はなにも言わずにキーホルダーを見てる。
…嫌かな?
「…いいの?もらって」
綾野がつぶやく。
わたしはそれに頷く。
すると綾野はにこっと笑う。
「ありがとう!大事にする!」
胸が苦しくなる。
なにそれ…反則でしょ。
なににつけよーかなーとウキウキしている綾野。
わたし…綾野のこと、好きかも。
ううん、好き。
これが〝恋〟なんだ。
綾野といると楽しくてどんなものでも輝いて見える。どんなことでも楽しい。
時々苦しい。とても愛しい。
〝この人と一緒にいたい〟
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