運命の人
「綾野くんと喧嘩してます?」
加宮さんは休み時間にそう聞いてきた。
「してないよ?」
そうですかと悩むポーズをとる。
「今日の由梨香さんは綾野くんに対して素っ気なく感じます。気のせいでしょうか?」
そんなつもりはないけどな…。
「普通…のはず」
「由梨香ー!来たよー!」
実樹が乱入してくる。
「いらっしゃい」
最近の実樹は前よりも明るい。
「翔くんとあんちゃんは?」
「あんちゃん?」
「宮沢くんなら綾野くんとトイレです」
実樹は加宮さんにありがとうと笑うと、あんちゃんの話をする。
「あんちゃんは賢太のことだよ!綾野の〝あ〟と、お兄ちゃんだから〝あんちゃん〟!」
「あれが兄なんて大変ですね」
そーお?と実樹は言う。
「ちなみに翔くんはなんか気取ってるように見えるけど昔は泣き虫…」
「実樹!やめろ!」
実樹の後ろに顔が真っ赤っかの宮沢。
その隣にへらへらしている綾野。
「あ、きたきた!ちょっと二人に話があってね!」
そう言って笑う実樹。
「それはそれはちょうど俺も実樹に用がある」
たぶん泣き虫をバラされたからその説教かな。
「おーなんのはなしだー?」
なんかこの三人いいな、癒される。
「…」
加宮さんがまた悲しそうな顔をしている。
最近宮沢が笑うことが増えると同時に加宮さんは切なそうな…。
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