初めての恋はあなたと。番外編
病院から戻って、ベッドに入りどれぐらい経っただろうか。

ガチャッと凄い勢いで玄関の扉が開いたかと思えば、そのままの勢いで寝室の扉が開いた。

扉が壊れるかと思うぐらいの凄い勢いで。


「潤一大丈夫⁉」


そう言って飛び込んできたのは、俺が渡した合鍵を握る一人の女性。
俺が大好きで堪らない彼女だった。


「あれ…由依?何でここに?」


由依がいるということは定時後のはずだ。

それほどぐっすり寝ていたのか?
そのわりに体調が戻ったような気がしないけど…。


「江崎課長に聞いたのよ!潤一が死にかけてるって‼」

病院から戻ってすぐ寝てしまったせいで、由依に連絡が出来なかったから助かったけど。

課長…それは言い過ぎだと思いますよ?
何も死にかけるまで体調は悪くない。

病院に行って「あー、風邪ですね。大丈夫ですよー」なんて言われたし。



「…ただの風邪だよ?」

「はい…?」


そう言うと由依は、わけが分かりませんといった顔を浮かべた。
その顔があまりにも間抜けなもので、体調が悪いというのに笑みがこぼれた。


「ということは…私はあの人に騙されたってこと⁉」

「うん、まあそうだろうね」

「何よあの閻魔!」

「でもさー由依ちゃん」


ニコリと微笑めば、由依はこちらを睨むよう見てくる。
そんな顔さえ可愛いと思うのは、風邪のせいかそうではないのか。

まあどちらにせよ。
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