初めての恋はあなたと。番外編
「俺のことそんなに気にしてくれてたの?」

「は⁉何でそうなるのよ!」

「だって必死に来てくれたんでしょ?」


由依を見れば髪の毛はぐちゃぐちゃだし、もちろん衣服も乱れている。
必死に来てくれたことは見ればよく分かる。

…嬉しい以外の何がある?


「嬉しいなー」

「ね、熱で頭おかしくなったんじゃないの!」


失礼な。
熱じゃなくてもそう思うって。

そう思いながら由依を見れば、自分で持ってきただろうビニール袋の中を漁っている。
何かと思えば、スポーツ飲料や冷却ジェルシートを取りだしている。

俺のために持ってきてくれたんだろうなと思うと嬉しいんだけど。


「ねえ由依さん」

「今度は何!」

「何で絆創膏とかが見えてるの?」


彼女の持ってきたビニール袋の中には、風邪には絶対効かないだろう絆創膏やガーゼが入っていた。

これは…俺の幻覚だろうか?


「たまたま入っていただけ!」


いやいやいや、たまたま絆創膏とかガーゼが入るのか?

じーっと見ているとしばらく黙っていたものの、由依は「だ、だって」と言った。


「ん?」

「あの人が死にかけてるって言うから、その…」


そう言って由依は俯いてしまった。

…つまり課長の言葉を、何か違う意味で受け取って色々持ってきたということだろうか。

まあそれほど俺のことを心配してくれていたと思い込んでおこう。
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