初めての恋はあなたと。番外編
しばらくして、和也さんがイスをひく音がした。

…愛想つかれちゃったかな。

いよいよ視界が揺らぎ始めた時。

私のすぐ横でイスがひかれる音がした。
予想外の展開に思わず顔を横に向けると、優しく微笑む和也さんがいた。


「やっと顔をあげたな」

「な、何で…」

「ん?」


てっきり愛想つかれてここから出て行ってしまうんじゃないかと思っていた。
だからすぐ横にいる和也さんに疑問しかなかった。


「何も言わなかった私に愛想つかないんですか…?」

「つくわけがないだろう?」


困った風に笑う和也さんに、必死に抑えていた涙が溢れてきそうになる。


「俺に千夏を縛りつける権利はないし、千夏の交際関係にあれこれ言うつもりもないが…何かある時は一言でもいいから言ってほしい」


そこで言葉を止めた和也さんは、イスを近づけ、体が横向きの私を抱きしめた。

もう何が何なのか理解出来ていない私は抱きしめられるがまま。
動くのはもちろん、言葉を発することさえ出来なかった。
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