初めての恋はあなたと。番外編
すぐ近くで和也さんの香りがする。


「…本音を言うとそうでもないんだ。本当は気になって仕方ないし、縛り付けれるものなら縛り付けたい」


表情は分からない。
けれど声は真剣そのもの。


「それぐらい千夏のことが好きなんだ」


その一言で私の心臓は鷲掴みにされた。
キュンとか、ドキッとかそういうものじゃない。


「…さすがに重いか」

「重くなんかないです!私には、その…もったいないと言いますか…」


自嘲気味に笑った和也さんに、私は上手く返せなかった。


「もったいないって…千夏は本当に面白いな」

「え?面白い?どういう意味ですか?」

「分からなくていい」


何で⁉︎

抱きしめられながら驚く私に、和也さんはいつものようにクスクスと笑う。

もう…和也さんっていつも笑って流してしまうんだから。
流されてしまう私もどうかと思うけど…。

でも今回ばかりは流してしまってはいけない。
ちゃんと言わないと。

和也さんに心配ばかりしてもらいたくない。
私ばかり言葉を受け取っていてはいけない。
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