初めての恋はあなたと。番外編
しかし相手は初心者。
ゆっくり、彼女のペースに合わせたい。

そう思いながらも、手は勝手に彼女の頭の上に伸びた。


「あ、あのっ」

「嫌だと思ったらすぐに言うこと。いいな?」


そう聞くと、彼女はコクコクと頷いた。
…その仕草がいちいち可愛い。

頭の上にあった手をずらし、彼女の頬に触れる。

今すぐにでもキスがしたい。

そう思った時。
タイミングを測っていたのか、軽快な電子音が少し開いた寝室のドアの隙間から聞こえてきた。


「あっ…」


彼女はパッと視線をリビングの方に向けた。
そういえばこの音は彼女の携帯だったような気がする。

しかし彼女は「あっ」と呟いたものの、俺を気遣ってか動こうとしない。

そんな彼女に、


「電話に出ておいで」


と声をかけた。

すると彼女は少し躊躇ったが、はいと返事をして寝室を出て行った。

その後の空虚感といえば、もうどう言葉にしたらいいのか分からない。

耐えられなくなった俺は寝室を後にし、彼女の声が聞こえるリビングへ向かった。
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