初めての恋はあなたと。番外編
「妹さんか?」

「はい…実家にいる時くらいは、家事から解放されたいって言ってました」


彼女とのお見合いの前に得た情報の中に、妹が一人いるというものがあった。

実家に、というフレーズも理解出来る。

以前彼女の母親に会った時、兄弟姉妹の話になり彼女の妹は留学していて、なかなか帰って来ないと聞いていたからだ。

長い間会っていない妹より、彼女は自分を優先してくれた。

そう考え、自惚れていいのだろうか。


「おいで」


そう呼べば、彼女は恥ずかしそうに頬を赤く染めてはにかむ。

そして彼女が一歩踏み出した時。
つい先程聞いた電子音が再び鳴った。

…ある意味タイミングが良すぎないか?

そう思ったが偶然だろうと無理矢理解釈し、彼女が電話に出るのを見ていた。

彼女は電話に出たと思えば、「今度行くから」と相手をなだめている。

どうやら電話の相手は有村らしい。


「飲んでないで早く帰ってね…え、ちょ由依⁉︎」


最後に有村の名を呼んだ彼女は、携帯を耳から話して溜め息をついた。


「有村がどうした?」

「相当酔ってるみたいで…私にもよく分からないです」


そう言いながら苦笑する彼女。

有村は酔うと、相当酷いらしい。

『あの子お酒には強いんですけど、飲みすぎると絡み方が酷くなるというか…』

そんな彼女の言葉を思い出し一人で納得。
< 49 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop