初めての恋はあなたと。番外編
「何でもない。それより…そろそろいいか?」


そう声をかけると、彼女は安心したような顔と意味が分からないという顔をした。

「何がいいの?」という言葉が、今にも聞こえてきそうである。

…言葉で伝えるより、行動で示した方がいいかもしれないな。

そう感じた俺は、少し離れた彼女に近付き


「ひゃっ‼︎」


軽々と彼女を抱き上げた。

すぐ近くで彼女のほんのり甘い香りがする。
それだけでどうにかなりそうだったのはここだけの話だ。


「か、和也さん重いですから降ろして下さい!」

「重くないから降ろさない」

「そんなっ…」


腕の中でわめく彼女に、返事をしつつさっきまでいた寝室に入った。

彼女をゆっくりとベッドに降ろす。

彼女の妹から電話がきて部屋を出た時に、部屋の電気を落としたままで今も部屋は薄暗い。

それでも彼女の顔は分かるぐらい赤く染まっている。

…いつか茹で蛸みたいになるのではないか?

ふと想像してしまい、失礼だと思いながらも笑ってしまった。


「私何かしました?」

「いや、何も…」


彼女はベッドに座る俺の横に来て、同じように座った。

手を伸ばせば、すぐそこに彼女がいる。


「千夏ーー」

『ピンポーンピンポーン』

「…」
< 51 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop