初めての恋はあなたと。番外編
…千夏はどうしているだろうか。

来客を迎えに行ったと思えば数十分は放置だ。
こんな彼氏がいていいのだろうか。

ぼんやりとそんなことを姉を眺めながら考えていた時、姉の携帯が軽快な音を鳴らした。

姉は一瞬出るのを躊躇ったものの電話に出て、嫌だの無理だのと文句を言い結局は渋々と分かったと言ったのだ。

横で聞いている俺にはさっぱり分からないが。


「ねえ和也お願い」

「無理だ」

「近くの駅まで送って」

「一人で行けるだろう」

「お願い、送ってほしいの…」


これが自分の身内じゃなかったら、無理矢理にでも追い出したと思う。

しかしどうであれ姉だ。
昔も今もなんだかんだでお世話になっている。

…近くの駅まで往復で約20分くらいか。

彼女には本当に申し訳ないが、もう少し待ってもらうしかない。

俺は姉に先に部屋を出ているよう言って寝室に入った。

彼女に今までの流れを簡潔に言うと、


「それは送って行ってあげてください」


と言われてしまった。


「本当に悪い、すぐに戻って来る」

「はい、待ってますから」


そう言って微笑む彼女の頭を撫で、上着を羽織り姉の元へ向かった。
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