初めての恋はあなたと。番外編
間抜けな声を出して倉石君の方を向くと、倉石君は糸くずのようなものを持っていた。

…糸くず?


「肩についていたので取りました。じゃあ俺はこれにて。これ以上ここにいると、八つ裂きにされそうなので」


そう笑顔で言った倉石君は社食売り場の方へと消えていった。

残された私は倉石君の最後の言葉を理解しようとしていた。

どういうこと…?


「八つ裂きにされるって…」

「確かにそうかもしれないな」

「かっ…江崎課長⁉︎」


心地よい声が聞こえたかと思ったら和也さんだった。

今日も相変わらずかっこいいなー…。
黒のスーツがよく似合っている。

…ってそうじゃない!

何故ここにいるかは分かる。
お昼だし、ここは社内食堂だし。

聞きたいのはいつからここにいたかということだ。


「あの江崎課長っ」

「小西さん、ちょっと来てもらえるか?」


一応確認した和也さんだが、私の返事は確認せずさっさと行ってしまった。

しかも相変わらずのペースで。
優しい和也さんは歩くスピードを私に合わせてくれるけど、何故かこういう時に限って全く合わせてくれない。

私は食べかけのきつねそばを放置して、小走りで和也さんの後を追った。
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