初めての恋はあなたと。番外編
連れて来られたのは非常階段。
やっぱり誰一人としていない。

耳を澄ませば遠くの方で、社員の声が微かに聞こえる。

和也さん…どうしたんだろう。

非常階段に連れてくるということは、何か話があるということだ。
すでに経験済みのため、そこはよく分かる。

しかし何故連れて来られたかは分からない。


「あの」


聞こうと思い、言いかけた瞬間。

気付いたら私の目の前には和也さん、後ろは壁という状況になっていた。

しかも和也さんの片方の腕は壁についている。
片方が空いているため逃げ道はあるのはあるが、体が言うことを聞いてくれない。

もちろん頭も言うことを聞いてくれない。

あ、あれ…これはいわゆる壁ドンという状況ですか?
何だか同じような体験をつい最近したような気がするけど…。

やけに冷静に状況を判断しながら、上を向くと表情の読めない和也さんが私を見ていた。

表情の読めない和也さんは一番怖い。
険しい表情が…と言う人もいるが、そんなことは絶対考えられない。
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