初めての恋はあなたと。番外編
「だ、だって和也さんっ…何もい、言ってくれなかったし、こういうの嫌なのかなって、思って…さ、さっきも呆れたような声で、…」


もうダメだ。

言えば言うほど、マイナス方面にしか考えられなくて言っていることが、めんどくさい女になっている気がする。

本当は泣くつもりなんてなかったのに。

どういうことですか?っていつも通り
普通に聞こうと思ってたのに。

せっかくの和也さんの誕生日なのに、泣いてしまうなんて私はどれだけバカなんだろう。


「千夏」

「うぅー…」


そんな優しい声で呼ばないで。
泣き止みたいのに、どんどん涙が出てくるから。

泣き止まない私に和也さんは「顔を見せてれ」と言って離れようとしたが、私が和也さんのコートを離さなかったため諦めた。

その代わり、優しく抱きしめてくれた。


「俺が君のことを嫌いになるなんて有り得ない。こんなにも惚れているのに、どう嫌いになれというんだ?」


和也さんは困ったように笑いながら、子供に聞かせるようにゆっくりと言う。

私はただ、和也さんのコートを掴みながら涙を必死に止めようと無駄な抵抗を試みるだけ。


「何も言わなかったんじゃない。何も言えなかったんだ」

「言えなかった…?」

「ああ。君が可愛すぎて言葉が出なかった。やっと出たかと思ったら反則しか言えなかった」


か、可愛いとか…何でそんなにサラリと言えるんですか!
こっちはただひたすら恥ずかしいのに!

そう心の中で叫んでいても、嬉しいものは嬉しくて。
気付いたらさっきまで止まらなかった涙が、嘘のようにキレイに止まっていた。
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