Q.草食系男子の捕獲方法を教えてください。
肉食系女子がリアルにもじもじしています。
私の心臓は破裂寸前だった。

目の前には、いかにも草食系男子!!って感じの爽やかな笑顔を向ける草野くんがいる。


『……』

会話が途切れて、私は下を向く。

もし…
もし今、花の話や哲学の話をふられたらどうしよう。

草野くんに見えるように、哲学の本を何冊も借りたことを、心から後悔した。


ふられる前に、何か話をしなければ。


『く、草野くんは、今帰りなの?』

私がそう聞くと、草野くんは、ふわりと笑って、

『うん。ハンバーガー食べてた』

と言った。


『森下さんは?』

『私は図書館の帰りで』

『……』

『……』

『あのさ、よかったら奏って呼んで?』

その言葉に、私はハッと顔を上げた。

草野くんは、爽やかすぎる笑顔で河川敷きの方を見ている。

『友だちがみんな、奏って呼ぶから、草野くん、て言われるとなんか変な感じがしてさ』

そ、そうか。

草野くんは男女問わず、誰からも『奏』って呼ばれてるから、そう呼ばれることにきっとなんの照れも深い意味も感じないんだ。
さすがは草食系男子だわ。

『か、奏くん。』


枕に向かって、夜な夜な練習した甲斐があったというもの。

きっと自然に聞こえたはず。

私と草野くん…じゃなくて、奏くんは並んでそのまま歩いて帰った。

草花と哲学の話をふられないように、私はどうでもいいことを話した。

『あの犬かわいいね』
とか、
『あの雲、ソフトクリームみたい』
とか、森ガールが言いそうなことを言ってみた。




『…じゃあ、私こっちだから』

河川敷きを歩き終わって、分かれ道のところで立ち止まる。

『うん、気をつけてね』

女の子みたいにきれいな顔をした奏くんが、ニコッと笑って言った。

『ばいばい』

『ばいばい』


私たちはそこで別れた。

ものすごくドキドキした。

『はぁ…』

奏くんは、なんとも思ってないんだろうな。

そう思うと、切なかった。

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