俺様社長とスキャンダルキス~おまけ完~
英志は、自分に驚いていた。

舞を苛める為に話しかけたのに、

最後に舞に息抜きをしろと屈託のない笑顔で言われ、

とても嬉しく思ったのだ。

「ったく、ギャップがあり過ぎだ」

そう言いながらも嬉しさが勝り、無意識に頬が緩んでいた。



…社長になって数年。

ただがむしゃらに、社長と言う役を必死にこなしてきた。

周りからの罵倒も、冷たい目も、もろともせずに仕事をこなしてきた。


そんな英志に、優しく声をかけたのは、舞が初めてだった。


でもなぜ、舞を見ると苛めたくなるのだろうか?

しばらく考えていた英志はハッとした。


「表情が、コロコロ変わるからか」

そう。舞に会って、まだ2回。

そのたった二回の間に、舞の表情は、確かにコロコロと変わっていた。

オドオドしたり、驚いたり、急に泣き出したり。


かと思ったら怒った顔をしてみたり、今日みたいに、優しい笑顔を見せたり。

英志の前に現れる女は、作った笑顔を張り付けているだけで、

何の面白みもなかった。

だが、舞は違った。

自分に正直に、ありのままを見せてくれた。
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