俺様社長とスキャンダルキス~おまけ完~
静香は思った。

私の事、何も知らないくせに、と。

でも、違った。英志は確かに静香の優しい面を知っていた。


静香の事は忘れられない。

あんなに優しい彼女を見てしまっているのだから。


まだ、英志が社長になったばかりの頃。

右も左もわからないそんな駆け出しの社長に、

親切にしてくれた女性がいた。

各会社の社長や重役を教えてくれ、笑顔で頑張ってくださいと言ってくれたのは、

間違いなく静香だった。


話し終え、別の場所に移動した静香だったが、

会場の中で、泣いている女の子を見つけ、一番に駆け付け、

一生懸命あやしながら、両親を探していた静香を見かけた。


そんな心優しい静香を、こんなにしてしまった自分に

腹が立った。…あの時、すぐにでも縁談の話が持ち上がっていれば、

英志の人生も、静香の人生も、変わっていたかもしれない。

…今頃、そんな事を言っても遅いのだが。



「静香さんはいつも周りを気にする心優しい人だ。

…だから、そんな事はできはしない」
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