俺様社長とスキャンダルキス~おまけ完~
奥に通された舞は、

店員にアルコールの弱いカクテルを頼むと、

窓辺の椅子に腰かけた。


「お待たせしました、また何かありましたらお呼びください」

そう言ってカクテルを置いた店員は、部屋を出ていった。


独りきりになり、舞の目にはみるみる涙が溜まる。

こんなに綺麗に見える夜景も、歪んでちゃんと見る事も出来ない。


…思いっきり泣いたら、

明日には、いつもの私に戻れるかな。

たくさん泣いたら、貴洋の事を忘れられるかな。

でも、どんなに泣いても、沈みきった心は浮上する事を知らないように、

海の底に沈みこんでいるようで、舞はもうどうしていいかわからなかった。


「また・・・泣いてるんだな」

「・・・・」

声の主はすぐにわかった。

でもまさか、昨日の今日でまたここに来ると思っていなかった舞は、

英志に視線を合わせる事が出来なかった。


そんな舞の横に立った英志は、舞の手を掴むと、

自分の腕の中に、舞を包み込んだ。


…どうして、英志の胸の中は、こんなにも安心するんだろう。
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