冷房のきいた部屋

約束の8時

早めに切り上げて

裕太のうちへ向かう


「ん?」

裕太のマンションから
見たことのある姿


「…あっ!あの人だ」

あの綺麗なひとだった

「ここに知り合いでも
いんのかなぁ〜」


なんて思いながら
あたしは彼女とすれ違う

かすかにいい香り


「やっぱ綺麗…」

そのまま胸の高ぶりを
押さえる様に
裕太の部屋へ向かう


ピンポーン…

いつもの足音

“ ガチャ ”


「よっ!上れよ」

「うん」


……あ…
やっぱりきいてる…

いつもの冷房…


中に入っていくと

「え…?」

「どした?」

さっき嗅いだばかりの
甘い香り…

彼女の香り…


「誰か…来てたの?」

「え?来てね〜けど」


……………

裕太の顔…

笑ってしまいそうだった
だって…
あからさまに…

焦ってる顔…



「そっか…ごめん勘違い」
「あ〜そかそか」

安心したような顔

あたしはこれ以上
なにも言わない…

だって好きだから
離れられないんだもん…

冷房くらい気にならない

甘い香りも関係ない

ただ裕太の…

裕太の傍にいたい…


いつか
冷房のきいてない日が
来るまで……

胸にしまっておこう

だけど
きっと……

明日も明後日も
一か月後も……

この部屋の

冷房はきいてるだろう…



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