白い月~夜明け前のその空に~
肩の力が抜けたところでふと我に返る優月。
あることに気づく。
「あれ、ここどこ?」
館内マップを慌てて広げるも、根っからの方向音痴で、地図が読めない彼女には何の意味もなさないアイテム。
1時間以上経っているせいか、さすがに陸から携帯に着信が入る。
「ゆづ、迷子はどうした?」
「え、ああ、さっき無事お母さん見つかったよー。どうなるかと思ったよ」
「そっか、それはよかった。じゃ、もう戻ってこれるよな、瞬がイルカ見たいって」
「イルカ?イルカのショーあったもんね。えっと…どこだ?」
片手でくるくるマップを回す優月。
「……お前、まさか自分が迷子になってたりしないよな?」
「はあ?何言ってんのー?もちろん迷子になってるよ、あははは」
「あははって、何自慢げに言ってんだ!バカゆづ!」
陸の怒鳴り声が耳にキーンと響く。