白い月~夜明け前のその空に~
しだいに子供の騒ぐ声もヒートアップ。
これじゃ陸が来ても気づきにくい。
すると、くいくいと後ろから自分の服の裾を引っ張る手があった。
その手の方を向くと、必死な形相の陸がいた。
「陸っ!」
「説教は後で。早く行くぞ」
裾を引っ張っていた陸の手は、気づけば優月の手を繋いでいて、人の群れから連れ出す。
これじゃさっきの迷子と立場が逆転したみたいで、何だか笑えた。
早足で進む陸の手に引かれ、後を付いていく優月。
懐かしさが風のように柔くよぎる。
きっと、幼い頃にもこんなことがよくあったはずだ。
(随分陸の背中も手も大きくなっちゃったな…。ていうか、手…、手?手えええええ!!!)