白い月~夜明け前のその空に~
少したってから、自分達が手を繋いでいることを改めて自覚する。
(こ、これって、今どう見られてるの?ど、どうしよう。恥ずかしい!もう無理ー!)
自覚した途端恥ずかしさがこみ上げ、鼓動も爆音になり、耐えかねて自分から手を振りほどく。
「どうした?」
「もう、混んでないから」
「あ…、それもそうだな」
手をほどかれた反動で陸はきょとんとしたが、その手はすぐ自分のポケットに入れ、再び歩き出した。
少しの間だけだったが、子供の時以来に手を繋いだ二人は、残った手の感触に気恥ずかしさだけではない、鼓動の中の、小さくも切ない波をそれぞれ感じていた。
けれど同じ鼓動を感じていたことなど、この時の二人は知る由もなかった。