白い月~夜明け前のその空に~
ニセモノの始まり…
―――暑さも和らぎ、風の中に秋の気配を感じる頃。
優月が放課後、手芸部で帆布地のショルダーバッグの製作を進めていると、窓の外から男女が楽しそうに校門を出ていくが姿が視界に入った。
茶髪で長身の男子生徒。
思い当たるのはあいつしかいない、そう思った優月は、ミシンから目を離す。
予想通りの長澤だ。
隣にいる女子生徒は知らない顔だった。
もしかしたら違う学年かもしれない。
長澤は学年に関係なく、校内の女子にとにかく人気がある。
噂では他校にもファンがいるとかいないとか……。
そのことも優月は前から知っていた。
計算か天然なのか、今目撃したその女子生徒は、長澤の袖を引っ張りながら歩いている。
もはやラブラブカップルに見えても仕方ない程の密着っぷり。