白い月~夜明け前のその空に~
彼が女の子と親しくしている姿は、もう何度も見てきた優月だったが、文化祭が終わった後のなりきり王子や、これまでの優しさを振り返ると、どうも複雑な気持ちが湧く。
誰にでも優しいだけ。
特別なことなんてない。
そんなの分かっていても、彼なりの気遣いに、優月が嬉しく思ったのは嘘じゃなかった。
長澤ペースに流され始めていることにも、そんなに嫌な気はしなくなっていた。
(本気で誰かを好きになったりしないのかな、あいつは…)
遠ざかる二人の背中を見ながら、優月は心の中で呟いた。
ミシンに再び戻ろうとすると、携帯電話のバイブ音に気づく。
メッセアプリに、陸から瞬が描い優月の顔らしき絵が送られてきた。
間を空けずに、今度は瞬の笑った写真が届く。
カメラ目線ではないが、くしゃくしゃに笑ってる姿は、声まで聞こえてきそうな程。