白い月~夜明け前のその空に~
瞬の存在を隠すこと…。
そんなこと、できるはずがない…。
下駄箱で、一際大きな影に気づく。
歩み寄ると、それは腕組みをしながら壁にもたれかかる長澤だった。
「終わった?呼び出しくらうとか、佐野ちゃんやっばいねぇ」
「バカにすんな」
「してないしてない。俺、佐野に提案あってさ、待ってたの」
「どうせくだらないことでしょー」
「いいから最後まで聞けって」
トンッと壁に手をつき、壁を背にした優月に顔を近づける。
その体勢のまま、彼女の耳に口を近づけ…そっと囁く。
「付き合おう。俺と」
ドッキン…
無反応でいるはずが、勝手に鼓動が高く響く。
長澤は、ゆっくり顔を離すとニコッと屈託ない笑顔を向ける。