白い月~夜明け前のその空に~


瞬の存在を隠すこと…。


そんなこと、できるはずがない…。









下駄箱で、一際大きな影に気づく。


歩み寄ると、それは腕組みをしながら壁にもたれかかる長澤だった。



「終わった?呼び出しくらうとか、佐野ちゃんやっばいねぇ」


「バカにすんな」


「してないしてない。俺、佐野に提案あってさ、待ってたの」


「どうせくだらないことでしょー」


「いいから最後まで聞けって」



トンッと壁に手をつき、壁を背にした優月に顔を近づける。


その体勢のまま、彼女の耳に口を近づけ…そっと囁く。



「付き合おう。俺と」



ドッキン…


無反応でいるはずが、勝手に鼓動が高く響く。


長澤は、ゆっくり顔を離すとニコッと屈託ない笑顔を向ける。
< 139 / 465 >

この作品をシェア

pagetop