白い月~夜明け前のその空に~
「…ごめん。今日は本当に用があるから」
「んー。そっか。残念だな」
ぷくっと、ほっぺを膨らませ拗ねた顔を見せる。
こういうわざとらしいようでわざとらしくないとこが、ひょっとしたら女子に人気がある秘訣なのか。
「じゃーね、また明日ぁ」
背中を向けしょんぼりと肩を落とし、とぼとぼ引き返そうとする長澤シャツの裾を、思いっきり優月は引っ張った。
「ぬわぁ~」
そのまま勢いで教室から廊下に連れ出す。
強く引っ張ったせいで、ぺろんと長澤のお腹が出てしまった。
「あ、ごめん」
「いやん。佐野ちゃん大胆」
両手を交差して自分の胸に手を当てる長澤。
(いや、隠すとこそこじゃないけどね)