白い月~夜明け前のその空に~

「だよな…。はは、ごめん。優月姫、そうだ優月姫でいいじゃん」


「やだ、絶対やだ」


「ははは、頑固」



無理やり雰囲気を変えたことは彼も分かっていたはずだ。

それでも気まずくなることを選ばない辺り、それも彼なりの優しさだった。



彼が『本気になりそう』と言ったことは、優月の耳にしっかり残っていたが、聞かなかったことにしようとしている、最低な都合のいい自分もいた。


拒まないで、期待させるようなことをして。




本当の気持ちを隠し、好きな人に嘘をつき、好意を抱いてくれている相手には都合のいいように扱い…。

こんなこと、良いわけがない。





自分の心がどんどん重くなっていく、優月はそんな気がした。







< 161 / 465 >

この作品をシェア

pagetop