白い月~夜明け前のその空に~
「だよな…。はは、ごめん。優月姫、そうだ優月姫でいいじゃん」
「やだ、絶対やだ」
「ははは、頑固」
無理やり雰囲気を変えたことは彼も分かっていたはずだ。
それでも気まずくなることを選ばない辺り、それも彼なりの優しさだった。
彼が『本気になりそう』と言ったことは、優月の耳にしっかり残っていたが、聞かなかったことにしようとしている、最低な都合のいい自分もいた。
拒まないで、期待させるようなことをして。
本当の気持ちを隠し、好きな人に嘘をつき、好意を抱いてくれている相手には都合のいいように扱い…。
こんなこと、良いわけがない。
自分の心がどんどん重くなっていく、優月はそんな気がした。