白い月~夜明け前のその空に~
昼休み、地下室の階段下で、優月は2年の女子生徒5人に囲まれていた。
つけまつ毛にカラコン、染髪、ピアス…、校則を完全に無視した格好は、長澤に好意を寄せる女子生徒の中でも一際目立つ人達で、優月も度々見かけていた。
話がある、とだけ言われて連れてこられた訳だが、用件はだいたい分かる。
(とうとう動きだしたか…)
「佐野さん、ていうんだっけ。子供がいるっていう噂で、随分有名になったもんね」
「実際、結構地味でびっくりしたんだけど」
「ははははは、本当。でも、人って分からないよね…、そんな地味ななりしてても、案外遊んでるんじゃない?」
「ね、あれ、本当なの?長澤光と付き合ってるって」
見下すような冷酷な眼差しを、刃のように優月に突きつける。
あまりの凄みでたじろぐ彼女だが、いくら何でもそんな簡単に、『嘘です』なんて、白状するわけにいかない。